先生と教え子
昨日は国立西洋美術館でトークイベント『リトグラフ再発見:技法と表現 刷り師の視点から』があり、いつもお世話になっている板津悟先生(刷り師 (プリンター)/善福寺石版画工房(Itazu Litho TOKYO)主宰)が講師として登壇されるので、私も聴きにいった。

《薔薇のケルベロス》2024年、紙にリトグラフ、380×560mm
トークイベントのことは以前から板津先生に伺っており、私も技法紹介ヴィデオのために作品制作をした(上の画像)ので、その映像がどんな感じで流れるのか、半分ワクワク半分不安だったけれど、だいぶ早回しだったので手際の悪さもあまり気にならず、いい感じに見えた。むしろ製版がうまくいきすぎて、リトグラフの難しさや理不尽さがあまり伝わってこないなあと思ったほどだった。リトグラフはざっくり言えば、石版石やアルミ版に油性の描画材で絵を描いた後、色々やって絵を一度溶剤で落とし、それからまた色々やって製版インクを盛ると、落としたはずの絵の部分に同じようにインクがつくようになっている!という技法である。でもその「色々やる」の部分で加減を間違えると、製版インクを盛っても同じような絵は出てこない。全体にインクがつきすぎて黒っぽく潰れたり、逆にインクがつかなくなって白飛びしたようになったりする。インクのつき方がムラになることもある。そしてその加減というのは、料理の火加減みたいなもので、使っている石版石の質や描画材の種類によって弱火から強火を微妙に使い分けながら処理する必要がある。